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「他人のせいにするな、自分で稼げ」は本当に正しいのか
「財務省デモを観たホリエモンが、“他人の所為にせず、自分で稼ぐ努力をしろ”というようなことを言っていた」
そんな話を聞いて、モヤモヤした人は少なくないと思います。
たしかに、「自分で稼ぐ力をつける」という考え方そのものは大事です。
誰かを恨み続けるだけでは生活は変わりにくいですし、スキルを身につける、副収入を作る、転職を考える、学び直す。そういう行動が必要な場面はあります。
実際、堀江貴文さんは2025年2月26日に「財務省解体してもどうしようもない理由を解説します」という動画を公開し、財務省解体デモに対して批判的な見方を示しています。女性自身の記事でも、財務省解体デモは「103万円の壁」などをきっかけにSNS上で財務省批判が広がり、消費税廃止や増税反対などの訴えにつながったと整理されています。
ただ、ここで考えたいのは、
「個人に向けた助言」と「社会全体の仕組みの話」は分けた方がいい
ということです。
個人に対して「できる範囲で力をつけよう」と言うのは、現実的な助言です。
でも、社会全体に向かって「稼げないのは努力不足」「苦しいのは自己責任」と言い切ってしまうと、話はかなり危うくなります。
なぜなら、人は全員、同じスタート地点に立っているわけではないからです。
健康状態、家庭環境、学歴、地域、親の経済力、介護、育児、障害、年齢、景気、雇用環境。
こうした条件は、自分の努力だけではどうにもならない部分があります。
だからこそ、
「自分で頑張ること」と「社会が支えること」は対立させるべきではない
のだと思います。
2. 「自分だけ這い上がればいい社会」は、なぜ殺伐とするのか
「それぞれが自分さえ這い上がれたらいい、という考え方になると、我利我利人間ばかりになって、殺伐とした世の中になるだけではないか」
この違和感は、とても大事です。
自己責任論が強くなりすぎると、人はだんだん他人の苦しみに鈍くなります。
「自分は努力した」
「だから、できない人は努力が足りない」
「助けを求める前に、自分で何とかしろ」
こういう空気が広がると、社会は一見すると効率的に見えるかもしれません。
でも実際には、弱った人から順番に追い詰められていきます。
病気になった人。
会社を辞めざるを得なかった人。
親の介護で働き方を変えた人。
非正規雇用から抜け出せない人。
AIや自動化で仕事の将来に不安を感じている人。
子育てや家計の負担で、学び直す余裕すらない人。
こういう人たちに対して、ただ「稼げ」と言うだけでは、現実的な解決になりません。
もちろん、努力は大切です。
でも、努力には体力も時間もお金も必要です。
明日の家賃や食費で頭がいっぱいの人に、
「将来のために勉強しろ」
「副業を始めろ」
「自分で稼ぐ力をつけろ」
と言っても、簡単ではありません。
ここで必要になるのが、社会保障の考え方です。
社会保障は、単に「弱い人を助ける制度」ではありません。
将来の自分を守るための仕組みでもあります。
今は元気に働けている人も、いつ病気になるか分かりません。
会社がなくなるかもしれません。
家族の介護で働けなくなるかもしれません。
年齢を重ねれば、体力も選択肢も変わります。
つまり、社会保障とは、
「今困っている誰か」のためであると同時に、「いつか困るかもしれない自分」のための制度
でもあるのです。
日刊スポーツの記事では、泉房穂氏が堀江氏の意見に対して、「誰もが努力したから金持ちになれるわけでもないし、誰もが高い能力を有しているわけでもない。だから政治が必要」という趣旨の反論をしたことが報じられています。
この視点は、かなり重要です。
3. ベーシックインカムは「甘え」ではなく、挑戦するための土台になりうる
ここで、ベーシックインカムの話につながります。
ベーシックインカムというと、
「働かなくてもお金がもらえる制度」
「怠け者を増やす制度」
というイメージで語られることがあります。
でも、それはかなり雑な見方です。
ベーシックインカムとは、一般的には、年齢・性別・所得などにかかわらず、すべての人に一定額を継続的に支給する基本生活保障の考え方です。SMBC日興証券の用語解説でも、年齢や所得水準などに関係なく、すべての国民や市民に一律の金額を恒久的に支給する制度と説明されています。
もちろん、実際に日本で導入するには大きな課題があります。
財源をどうするのか。
既存の年金、生活保護、失業給付、児童手当などとどう整理するのか。
支給額はいくらにするのか。
物価や税制への影響をどう考えるのか。
ここは簡単に「やればいい」と言える話ではありません。
ただし、ベーシックインカムの本質は、
「働かなくてよくすること」ではなく、「生活が壊れない最低ラインを作ること」
だと考えた方が分かりやすいです。
生活が完全に崩れる不安が少しでも軽くなれば、人は挑戦しやすくなります。
転職する。
資格を取る。
副業を始める。
ブラックな職場から離れる。
介護や子育てと仕事のバランスを取り直す。
収入が不安定でも、創作や小さな事業に挑戦する。
こうした行動は、安心がゼロの状態ではなかなかできません。
「自分で稼ぐ力をつけろ」と言うなら、なおさら、最低限の安心が必要です。
なぜなら、人は追い詰められすぎると、長期的な努力ができなくなるからです。
明日の生活が不安な人に、10年後を見据えた行動を求めるのは酷です。
だからこそ、ベーシックインカムは「努力しないための制度」ではなく、
努力や挑戦を始める前に生活が詰まないようにする制度
として考えることができます。
4. 必要なのは「自己責任か社会保障か」ではなく、その両方をどう組み合わせるか
結局のところ、必要なのは「自己責任」か「社会保障」か、という二択ではありません。
個人が何もしなくていい社会も、現実的ではありません。
一方で、すべてを個人の努力に押しつける社会も、かなり危険です。
大切なのは、バランスです。
個人は、できる範囲で稼ぐ力をつける。
社会は、人が壊れる前に支える仕組みを用意する。
政治は、苦しさを「努力不足」で片づけず、制度として整理する。
成功した人は、自分の努力だけでなく、社会の土台にも支えられていたことを忘れない。
このバランスが崩れると、社会は冷たくなります。
「勝った人だけが正しい」
「稼げる人だけが価値ある人間」
「困っている人は自己責任」
そんな空気が広がれば、誰も安心して生きられません。
そして皮肉なことに、そういう社会では、挑戦する人も減っていきます。
失敗したら終わり。
病気になったら終わり。
会社を辞めたら終わり。
一度落ちたら這い上がれない。
そんな社会で、本当に人は自由に挑戦できるでしょうか。
むしろ必要なのは、
失敗しても人生が終わらない社会
です。
ベーシックインカムは、そのための一つの選択肢です。
万能薬ではありません。
財源や制度設計の課題もあります。
でも、「自己責任だけでは社会がもたない」という問題を考えるうえで、とても重要なテーマです。
「自分で稼げ」という言葉は、個人を奮い立たせることがあります。
でも、それだけでは救えない人がいます。
だからこそ、これからの社会に必要なのは、
自分で努力する人を増やすことと、努力する前に潰れない仕組みを作ること
の両方ではないでしょうか。
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